献身 devotion

 
ナチス政権によるホロコースト(人種差別、虐殺政策)のなかアウシュヴィッツ(ビルケナウ強制収容所)にて奇跡的に生き残った少女が、
数十年経って当時の惨事を回想した話の中から紹介します。


少女は家族とともにアウシュビッツに行きますが、楽器演奏ができるということで収容所の中に作られたオーケストラに配置され、奇跡的に生き残ることができました。

その彼女が実体験に基づいて、収容所で行われたヒエラルキーによる人間の醜さ、
残虐な生存与奪行為、ジェノサイド、人間の絶望について語るのですが、
その中で唯一、人間らしい愛を感じたエピソードとして話した内容です。



「本物の献身を知りました。それは無償の愛で、人間が持つ本質的な美しさを知りました・・」

「収容所の中で毎日、何往復も、産湯を運んだ女性がいました・・」

「痩せきった体に擦り傷をおいながらも、明るい笑みで何往復も産湯を運んでいました・・」

「すぐに殺されてしまう赤ちゃん達のために・・」

「私は彼女の献身的な笑みが忘れられない・・・」と



アウシュビッツでは列車で収容所に着くと最初に「働ける人間」「実験する人間」「不要な人間」として選別され、女性や子供は「不要な人間」とされ、
120cmに満たない子供はすぐにガス室送りになりました。

彼女の運んだ産湯は、これからガス室に入れられてしまう明日のない子供たちのために必死で運び、
満面の笑みで母親に産湯を与え、喜び与え、子供たちにも喜び与えました。

それは絶望的な状況で、おそらく出来る最高の贈り物だったのでしょう。


こんな悲劇的な殺戮行為は二度とあってはならない事です。

それと同時に、彼女の献身的なやさしさについても語り伝え、
彼女にも天国で安らかなるよう願います。